やっぱり?と白い歯を見せて笑いかけてくる。
オレンジ色の帰り道にふたりの笑い声が響いた。

何度もふたりで歩いたあの帰り道にはいつも笑い声が響いていた。

休日は毎週と言っていいほど一緒に出かけた。
好みも似ていて何をするにも気が合う私達は一緒にいるだけで全てが楽しかった。

例えば、ショッピング。

「ねぇ、紗奈〜。私に似合う服選んでっ。」

人なつっこい笑顔で私を頼ってくる紗来が可愛くて。
私はしょうがないなぁ〜と漏らしながら真剣に紗来に似合う服を選ぶ。

「あ、これとかどう!?」

「いいね、可愛いっ!って、それ着ぐるみじゃん!」

「あはは!」

私達の間にはどこへ行っても笑いが溢れていた。


例えば、コンサート。

初めての時は気合いを入れてペアルックで参戦。

いざ会場に着くと緊張で縮こまって見てたっけ。

帰り道は興奮しきっていて
疲れて家に帰る道中のサラリーマンにとっては
私達は迷惑のかたまり以外の何者でもなかっただろう。

その日はそのままのノリで家にお泊り。
朝まではしゃいでお母さんに叱られたのを覚えている。

音楽について語り合った最高に楽しい夜だった。


例えば、海。

昼間は暑い砂浜で散々遊んで
あまり人の居なくなった夕暮れ時、
すっかり静まりかえった海を見ながら
まだ暖かい砂の上に腰をおろした。
夕日に照らされた水面が綺麗で
私達の心もこの波のように穏やかだった。

何かきっかけがあった訳でもなく
紗来は静かに語り出した。

「私さ、紗奈と出逢えて本当によかった。」

ふいに漏れた紗来の言葉は私を嬉しくさせた。
でも、紗来によって笑顔になった私の表情は
同じ人の言葉によって
驚きの表情へと変えられた。

この日初めて知った
紗来の明るさの裏にある苦しみ。

紗来が母子家庭で育ったことすら、私は知らなかった。

「ずっとお母さんとふたりで過ごしてきたから、なんか新しい家族ができたみたいで嬉しい。」

そう話す紗来に
頭に浮かんだこの疑問を聞いていいものか少し迷ったが、その時間は長くは続かなかった。
私達は何でも言い合える仲になっていたから。

「お母さんとふたりってことは、お父さん…亡くなったの?」
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