地味子の秘密*番外編*
たくっ。今日は、ホワイトデーだというのに……こんなにヒヤヒヤした1日になるとは。


「せっかく、明日は休みにしたから……遊園地にでも連れて行こうと思っていたのになぁ~?」


ーーピクッ

俺の言葉に、杏の体が小さく反応する。


今日が無理だったから、急きょ、明日仕事をしないようにスケジュールを変えさせたっていうのに、こんなんじゃ、簡単にご褒美はやれないな。

お仕置きをしなければ。


「杏、遊園地から……虫のペットショップ巡りに変更だな」

「え……」

「そりゃそうだろ? 俺に心配ばっかさせたんだ、簡単にはご褒美なんてやらねーよ」

「え? え?」

ニヤリと笑ってみせると、案の定杏の目には涙が溜まりはじめた。


「明日でいいよな? ウシガエルに、ゴキブリ、ヘビまでフルコースで回ろうか?」


そういった瞬間、サァ―――っと杏の顔から血の気が引いていく。

「や、ヤダっ……」

真っ青な顔でフルフルと顔を横に振ってみせた。


「じゃあ、明日の10時に迎えに行くから。支度してろよ?」

「い、いやああああああああ!」


あぁ楽しい。

この天然娘に、俺は度々振り回されているんだから、たまにはこのくらいいいはず。



泣き叫ぶような杏に、ニッコリと笑みをおくり……その日は自宅へ送り届けた。







そして、翌日。


術を使って、部屋から出ないようにしていたのを、杏のおじい様に頼み、術を解除してもらって出かけた。

杏は、終始……泣きわめいていたけど。


まぁ、それはペットショップに着いてからが酷く。

おじい様が、杏に術を発動できないようにしたものだから、店内で本気の追いかけっこ。


午前中に2件のショップを回るだけで、天然娘は疲労困ぱいという言葉がしっかりとあてはまるようになっていた。
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