地味子の秘密*番外編*
手拭いを頭から取り、タオルで汗をぬぐいながらヤツの様子を見る。

なにやら思いつめた感じだが……俺にはカンケ―ない。


「さっさと着替えろ。送る」


一言だけ告げ、その場から立ち上がった。


防具を棚に置き、道場を出ようとした時。


――パタパタッ……!


「は?」


足音が聞こえたと思ったら、背後から腰に茅那が抱きついてきた。


すがるように、強く腰に腕をまわされる。



「おい。なに考えてんだ。離せ」



ヤツの腕を引きはがそうをして、触れた瞬間……小刻みに、震えていることに気が付いた。



なんだ、コイツ……?



顔だけを後ろへと向けるが、俺の背中にピッタリとくっつけている。


表情が見えない。



「何してんだ。ぶっ殺されたいのか」



物騒なことを口にするが、茅那はビクともしない。


ちっ。離れると思ったのに、当てが外れた。
< 240 / 381 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop