地味子の秘密*番外編*

あ―――。

マジで、かわいいんですけど。

朝から、今日は髪をいつもより細かいウェーブが出来るように巻き、フワフワ感が多めだと思っていたが、耳の下でふたつ結びにしてあり、この格好をするためだったのかと妙に納得する。

魔女の格好に似合っている。

杏はキョロキョロと教室内を見渡し、俺の姿を見つけるとパタパタと駆けと寄って来た。

楽しそうにニコニコと笑っている。

そんな姿を近くで見ると、さらにかわいい。

俺は椅子に再び座り、隣に立つ杏を見上げた。

ほとんど化粧もしていないのに、唇は赤く潤っており、頬は薄いピンク色だ。

口パクで『陸』と名前を呼ばれる。


「ん? どうした?」


問いかけると、杏がいつも使っているホワイトボードを見せてきた。

そこに書かれていたのは。


『Trick or Treat?』


“お菓子をくれなきゃ、イタズラするよ?”


そんな言葉で、俺はバックの中に何かなかったか探してみる。

だが、甘いものが嫌いな俺が、菓子なんて持参しているわけがない。

どーすっかな。

そう思っていると、トントンと肩を杏から叩かれた。

彼女に視線を戻すと、またホワイトボードを見せてくる。


『お菓子持ってない?』


「そうだな。持ってねーよ」

正直に返すと、杏は、ニッコリと笑った。

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