地味子の秘密*番外編*
放課後―――。

「喜んでくれてよかった~♪」

隣を歩くコイツは、ニコニコ笑顔。

今は、俺の家に向かっている最中だ。

行く理由は、岡本さんにチョコを渡すため。

それでも、今の杏はご機嫌だった。

なぜなら、さっき雑鬼たちにあげたチョコケーキが大好評だったらしい。

藍鬼がうれしそうに食っていたんだと。

……もう悲しいを通り越して、ムカついてきたんだけど。

「やっぱり、ケーキでよかった!ホントはね、トリュフとかにしようかなって思ってたん
だけど。量が多い方が喜ぶかなって考えたんだぁ~♪」

「ふ~ん」

うれしそうな表情の杏に、そっけなく返す。

「あれ?拗ねてる?」

「別に」

「ウソだぁ~!なにかあった?」


“なにかあった?”じゃねーだろ。

俺の顔を下から見上げてくる杏に、ため息をついた。

「なんでもねーよ」

そう言って、杏の髪をクシャクシャと撫でる。

「そう?」

「ん」

頷いて見せて、もう一度手を握り直した。


「チョコいっぱいもらったね?」

「あぁ」

「何人の女の子に告白された?」

「18」

「1日で?すごっ!」


答えた数に、感心しているコイツ。

「モテる人ってすごいなぁ~」なんて言っている。

お前も、そのモテる人なんだけど。


つーか、コイツ、俺が告白されようが……まったく妬かない。

さっきだって、他校の女が正門に待ち伏せしていた時も、イヤな顔ひとつせずに―――。

「告白でしょ?行ってきなよ」と、微笑んで、送り出された。

なんで?

フツー妬かないか?

彼氏が他の女にコクられているっていうのに。


もし立場が逆で、俺なら、杏に男が近寄るだけでイヤだ。

コイツがOKするとは思わないが、それでもコクられるなんてイヤだ。
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