地味子の秘密*番外編*
「何個あるかな~100個はあるよね~?」
俺たちの後ろを歩いてくる杏の式を見つめながら、そう言う杏。
あまりにもチョコをもらい過ぎて、俺だけでは持てなかったため、杏の作った人型の式に
持ってもらうことにしたんだ。
もちろん杏が術をかけて、フツーの人間には、式が見えないようにしてある。
式ふたりを連れて、ようやく自宅まで着いた。
家の中に入ると、岡本さんが出迎えてくれる。
「杏樹様!」
「岡本さ~ん!」
ニコニコ笑顔の杏が、彼女に近づき……「よかったら、もらってくれませんか?」と、チ
ョコの入った箱をカバンから出して差し出した。
「まぁ!いいんですか?ありがとうございます!」
岡本さんはうれしそうに笑って、杏から受け取る。
……友チョコなんて嫌いだ。
本命しか作らないという決まりがあればいいのに!
それなら、俺にも作ってくれたはずだろ?
杏がくれないことにムカムカする。
チョコがダメなら、杏ちゃん食べようか?
昨日、お預け喰らったわけだし。
悶々と、そんなことを考えていたら―――……。
「杏樹様に、咲様からチョコを預かっているんですよ」
岡本さんがそう言って、ピンクの紙で包装された小さな箱を杏に渡した。
「咲さんからですか?うれしい!」
キャッキャッと声を上げて、受け取る。
ついでにと、咲姉へのチョコも岡本さんに預けた。