1/5の罪と傷、6%の生きる糧
中絶の翌日、

聡は友達の結婚式の2次会で家を空けた。

行きたくない、そう言ったけど

私が無理やり行かせた。

帰ってきた彼は、

「俺だって、こんな風に終わらせたかったわけじゃない。どうして、花嫁は志保じゃなかったの?どうして、俺達じゃなかったの?」

とその場で泣き崩れた。

涙ぐむ事はあっても、

絶対に泣かない彼が

号泣するのを見たのははじめてで、

私は彼を抱きしめて慰めながら、

今、包丁を取り出して彼を刺すべきか

刺さないべきなのか

それを、本気で迷った。

心の中ではもう

何百回と刺しまくっていたけれど、

現実の世界で

私が彼を刺してあげることは、

できなかった。

彼がこの時、たった一瞬でも

本気で私に殺されたくて、

それを私は知っていて、

私も一緒に死にたいと切望する

気持ちを抑えることなく

確実に殺してあげられたのにも関わらず。

どうして出来なかったのか?

それは、彼が私を

あの頃も、

今も、

これからも、

殺す事さえできないからで、

それが聡と私の決定的な違いで、

それが私にとってどれだけ痛い事か

彼は生涯理解しない事が、

分かったからだった。



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