キスより甘く囁いて
第一章

おさななじみ



パシン、と、乾いた音が部屋に響く。

目の前には、涙目の女が立っていて、その瞳は俺をしっかりと睨んでいる。



…ああ、また同じだった。



このパターンは何回か見た。

俺が右ほっぺにビンタを食らって、女が泣いて怒って出て行くパターン。

だから驚かない。



「凛の馬鹿! もう私達別れよう!」

「…分かった」

「……引き止めもしないんだね」



なんで引き止めなきゃいけねぇんだよ。

「別れよう」、って言いだしたのはそっちじゃねぇか。


< 1 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop