君に本当の愛を教えよう



「…先生」



彼女はオドオドしながら
立ち上がった


せっかく越後が
手出してくれてんのに


彼女は自力で立ち上がった


失礼な女…



「増井まだいたのかぁ!」



「これ彼女に返しかったから」



そう言って文庫本を見せるが
本当は彼女にまた会ってみたかったんだ



「はい。これ、君のでしょ?」



「そ、それは…」



目も合わせない


ずっとオドオドしてる


変な女



「それ俺の」



パシッ



越後に文庫本を取られた


なんだ
越後のだったのかよ



「本好きなの?
俺も結構読む方なんだ」



目が合わなくても
話し続けた


もっと明るいところで
彼女の顔を見たい



「ッ…」



また走り出そうとしたとき


越後が



「翔子ぉ
またそうやって逃げるの?」



彼女の目は潤んでいた




「ちょっとお姉さん訳ありだから
増井、気悪くさせてたらごめんな?」



「いや別に…」



訳あり?


なんなんだ?



「ちょっと中で3人で話そうよ
いい、翔子?」



彼女は
首を縦にも横にも
振らなかった


ただ越後を見ていた
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