with you
「今日みたいに困ったことがあったら愛理か、俺に相談したらいいよ。いつでも力になるから。でも、愛理は一応女の子だから、危険な目に遭わせたくないし、今みたいなときは俺にいってほしいけどね」


 彼はそう言うと、笑顔を浮べていた。


 私が想像もしていなかった言葉に何も言えないでいると、彼は私の頭を軽く小突く。


「分かった?」


「でも」


「君ってさ、人から頼まれると嫌って言えないタイプだよね。さっきみたいに言われて、まちがって付き合うようになるより、俺を頼ったほうがいいと思わない?」


 確かにそうだった。さっきのことを思い出し、心が震えた。


「俺は、愛理の大事な友達だし、見返りを要求したりはしないから安心して。だから、そうすること」


 半ば命令的に言われたのにもかかわらず、嫌な気持ちは一切なかった。ただ、彼の言葉に戸惑い、彼を見つめていたのだ。


 彼はそういうと笑っていた。


 彼はこういう人なんだってわかった。私だけが特別なだけじゃない。


 彼の持っている優しい雰囲気のせいなのか、胸の奥がほっとするのが分かった。


 私が小さく頷くと、彼は笑顔を浮かべていた。


 困ったことがあっても彼に頼むことはないと思うけど、それでも彼の言葉が嬉しかった。


 家の近くまで行くと、足を止める。
< 26 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop