珈琲と孤独
少したち。
「貴方は小説に何を表したいと思う?」
彼女はキミに視線をうつすわけでもなく、隣の席で前を向いて問う。
ふと湧いた質問は、キミの心にこびりつき、なるほど疑問に感じたのだろう。少し考えてからキミは言った。
「結婚前の女の様に言えば僕の世界観を表して人々に伝えたいと思う。結婚後の女の様に言えば自分の妄想を形に表して自己満足をしたい」
短くも長くもない髪を揺らして、此方を向き少し目を伏せめがちに答えるが、その回答にいまだ納得がいかない様に少し悩む。
「つまり、どういうことよ」
彼女はキミの目を覗き込むように、視線をうつす。
「綺麗事と心の中の真実さ」
キミは鼻で笑った後、彼女が笑い、それにつられたようにキミも笑う。
二人、本心から笑えることは、久しぶりだった。
そんな感情も、なるほど確かにそうかもしれない、という思いをと、共有して。
「貴方ユーモアあるのじゃないかしら」
「そうでもないさ」
確かにそうでもないのかもしれない。

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