珈琲と孤独
一章
昼休み、キミは頬杖をつき、窓の外を眺める。人間によって穢された街は特に代わり映えもすることなく目にうつる。
窓は薄汚れ、雲は青い空に転々と孤独に取り残され、世の人々を表しているようだった。
しかし、人々は孤独な者同士で関わり合い、ソレを忘れようとしていた。
騒がしく、狭苦しく。その世界に、この物語の主人公、キミはいる。
「…貴方のゆめは、何?」
キミは聞かれて、彼女の方を向く。
キミの瞳には、見慣れた、それでいて慣れない姿がうつったはずだろう。
肩に届くか届かないかの黒髪に、人形の様な白い肌と制服。
「…何故?」
キミは問い返す。当然だろう、突然ほとんど話したことのない女子生徒が夢は何、なぞと聞いてこられれば、普通に答えるのは気が引けるものだ。
しかし返される言葉はなく、二人はほぼ見つめあう状態になっていた。
キミはあきれ返ったように、仕方なさそうに口を開き、
「作家」
と質問に答える。
キミは照れくさそうにそっぽを向き机に伏せる。
「素敵ね」
彼女は笑顔で、そう言った。
キミに少し近寄りながら。
「お世辞は結構、素敵じゃあないさ」
「そうかしら?私はとても素敵だと思うわ。世辞っても得はないし」
キミへ笑いかけながら、言う。キミは、少し此方へ視線を向けて
「そう、ありがとう」
と、少し微笑んで言った。
そしてまた窓の外を見る。
キミの目には、その青は明るくうつったはずだ。
少し、代わり映えした日常へ向かう伏線が張られただろう?
おそらく。

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