プリシラ
「ね、あるの? してみたくない?」
先生は僕の肩に手を置いた。
指先が変に湿っていて熱い。
普通ならドキドキするはずのシチュエーションなのに、僕はあのスナック菓子の味を思い出して、うんざりした気分になってきたんだ。
先生はきっと僕とキスしたいんだろう。
先生なのに。
キスを断ったら先生は悲しむんだろうか。
キスはしたくないけど、悲しませる事もしたくない。
女に興味が無いわけじゃない。
セックスだってしたくない訳じゃない。
ただ嫌なんだ、こういう感じが。
どこかで競ったり争ったりして、その中心に僕がいることが。
僕の存在のせいでピースなマルが崩れていくのが堪らなく嫌なんだ。
それに女は本当は何を考えているのかわからない。
誘うくせに誘われたせいにしたがる。
気分が滅入って俯いた。
「恥ずかしいの? 怒った顔も可愛いのね」
そう言って僕の唇を奪ったのは先生だ。
思考回路がおかしくなっていた僕は逃げることもしなかった。
別に恥ずかしくなんか無い。
恥ずかしいのはそっちだろ。
キスされながら、そんな事を考えて薄目を開けて先生の顔を見ていた。
