上司に恋しちゃいました
そんな様子を見るとイライラする。


見ないようにしていても、女の子の猫撫で声が神経を苛立だたせる。


昨日までは気にも留めていなかったのに。


なぜか嫉妬のような感情が湧き上がったのと、鬼の王子に話しかけられて少しドキドキしていた自分自身に対して、さらに腹が立った。


鬼の王子は、もっと話したがっているように見える女の子を上手にかわすと、ホワイトボードの前に立った。


ポンッとペンの蓋を取ると、鬼木と書かれた自分の名字の隣に左手で「外出」と書いた。


──出掛けるんだ……。


女の子達からやる気が奪われていく。


あたしはほっとしたような、少し残念なような、複雑な気持ちをもてあましていた。
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