上司に恋しちゃいました
五年付き合ってきた恋人との思い出は、苦い最後のせいで、全てが嫌な思い出に変化してしまった。


楽しかった思い出も、甘い言葉も、どこからが真実で、どこからが嘘だったのか分からなくなる。


拓也のマンション前のコンビニで、拓也と鉢合わせした。


彼の隣には、部屋着を着た女の子が立っていた。


……そんなに可愛いとは思えなかった。


スッピンだったからかもしれないけれど。


だが、あたしはこの子に負けたらしい。


部屋着にスッピンで、家の前のコンビニに二人で来るということは、二人がどんな関係にあるのか分からないくらい鈍感ではない。



彼はあたしを見て、あっと一声漏らしたけれど、次の瞬間には、まるで知らない人を見るかのように、あたしの前を通り過ぎていった。


そのことが何を意味するのか。


分からないくらい、鈍感な女でありたかった。


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