上司に恋しちゃいました
……本当に悲しい時は涙も出ない。



泣き叫べれば、どんなにいいかと思った。


人目を気にせず、わんわん泣きたかった。


けれど、あたしの目からは涙さえ溢れてこなかった。


そんなに好きではなかったのだろうか。


五年もの歳月を共に歩んできた男だったのに……。


こんな時ですら、人目を気にしてしまう自分が悲しかった。


悲しくて、悔しくて……


そしてやっぱり、惨めだった。

< 23 / 341 >

この作品をシェア

pagetop