上司に恋しちゃいました
固まっているあたしを見て「何やってんだよ、早くしろよ。風邪引くぞ」と言った。



無理やり手を引っ張られているわけではないけれど、この強引さ。



呆れながらも、一応はあたしの身体を気遣ってくれているようなので、少しだけ嬉しくもあった。



こんな優しさも、優しさと呼べるのかどうかは分からない。


それでも私は、鬼でも悪魔でも、誰でもいいから側にいてほしかった。


全てがもう、どうでもよかった。



あたしの身体を触れるであろう指に、指輪がはめられていたとしても。


もう、何も考えたくなかった。


< 26 / 341 >

この作品をシェア

pagetop