上司に恋しちゃいました
なかなかキスをしようとしないあたし達を見かねて、司祭が再び言った。


「誓いのキスを」


すると鬼の王子が、待ってましたと言わんばかりに目を光らせた。


あっと思った時にはもう遅かった。


鬼の王子の手が、あたしの頭と腰に当てられ、ぐっと引き寄せられた。


押し付けられた唇。


強引すぎる激しいキスは、あたし達の初めてのキスを彷彿させた。


司祭をはじめ、その場にいた全員が息を呑んだ。


その姿を楽しむかのように、鬼の王子は向きを変え動きを変え、深く咥内に侵入してくる。


「……んっ」


息をするのも許してもらえないほどの、激しいキス。


目の前で不埒な行為を見せつけられた、世慣れしていないウブなお母さんは、神様の代わりに腰を抜かした。


新郎側の親族席からは「いいぞ~! もっとやれ!」と揶揄(やゆ)が飛んだ。



そして、永遠に続くかと思うほどの長いキスを止めたのは、お父さんから発せられた、身も凍るような静かな殺気だった。
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