上司に恋しちゃいました
「宮沢、誰に対してもあんな言い方するんだろ? よく問題にならないな」


鬼の王子が宮沢さんに聞こえないように、小さな声であたしに耳打ちしてくる。


「問題にならないわけないよ。倍以上歳の離れた取引先のお偉いさん方とよく喧嘩してる。でも本気でぶつかった相手ほど、なぜか親密になってるんだよね」


「まあ確かに、不思議と腹は立たない」


「実は彼女の一番の才能はここなんじゃないかと最近思ってきた」


 あたし達がこそこそ話している間、当の宮沢さんはカメラマンに、現場監督ばりの威圧感で指示を出していた。さすが敏腕女社長と言われるだけの迫力がある。

 
 写真はなんと、一発OKだった。

凄くいい写真だった。あたしと鬼の王子に挟まれるように優樹菜がいて、画面いっぱいに写った三人の顔写真。


誰ひとり作り笑顔ではなく、身体全体から幸せが滲み出ていた。


あたしと鬼の王子は笑い下手だと思っていた宮沢さんは、最後の写真に時間がかかると思っていたらしく、とても驚いていた。

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