初恋 ―約束。―


「夏鈴!おっそいよ!」

「ごめーんっ」

更衣室で髪型を整えながらみきがあたしに声をかけた。

「今からハイスピードで着替えるからっ」

「頼むよー山先怒るとややこしいんだから!」


山先というのは体育の山口先生のことだ。

普段は優しくて面白いのに、遅刻をしたり、忘れ物をするとすっごく怖い。

「わーっ!あと2分!早くーー!!」

「ごめーんっ」



あたし達はなんとか間に合った。


が、なんと体育の教科書を忘れてしまった…。



「うそーっ、もうロッカーまで戻れないよ…」


チャイムが鳴って先生が来た。


「はーい、授業始めるぞー。じゃ、忘れ物をした奴、きりーつ」



あまり体育の先生らしくない間延びした声が響く。



あたしは恐る恐る立ち上がり、「夏川です。体育の教科書を忘れました」と言った。


「夏川ー!お前は何を考えとるんだ!だいt…」

先生がいつもの長いお説教をはじめようとしたその時。





「すいませーん、俺が夏川の持ってましたー」








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