【短編集】フルーツ★バスケット

逃走


「あぁっあ、また一つ歳取るのか」

「陽、親父くさい!!」

「うるせえ!!」

 どうして、誕生日が嬉しくないんだろ?

 自分がこの世に誕生した瞬間よ。

 それに、歳を取るって素敵じゃない。
 一歩ずつ大人になるって事なのに。

 あたしは、陽の誕生日が待ち遠しくて仕方ない。

 今隣で拗ねているのは、赤城 陽(あかぎ よう)

 そして、あたしは、川崎 凛子(かわさき りんこ)
 彼との関係を聞かれると、微妙。

 殆ど毎日一緒にいるけど、彼氏ではない。
 幼馴染みとも違う。

 友達っていうのかな?
 それも違う気がする。

 取り敢えず、今は楽。

 そう。
 それだわ。

 彼とは、ちょっと不思議な出逢いだったの。

 それは、霜の降りる紺碧の空の下だったね。

 あの時、捕まえてくれていなかったら、あたしは、きっとこの世界に存在出来なかったのかもしれない。

 考えるだけでゾッとする。

 忘れなきゃ。
 あの日から生まれ変わったんだから。

 それは、1年前のあの日の事──


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