【短編集】フルーツ★バスケット

 この時間になると、ポツポツ、と酔っ払いたちが増えてきたようで、アルコール臭い異様な空気が流れ込んでくる。

 関わりにならないうちにサッサと通り抜けたい。

 だけど、こういう時に限って千鳥足の通行人に足止めを受けてしまう。

 もう、邪魔。
 1秒でも無駄に出来ないのに。

 気が付けば、バスが沢山並んでいる。

 行き先確認しないで乗ったりしたら大変な事になりそうだけど。

 少し先に列になっていないバスがあるみたいだったから、仮のゴールを目指して更にスピードを上げ始めた。

 と思った瞬間、腕を掴まれた。

 嘘でしょ。
 いつ、追い付いたのよ!

「ごめん!!
 君を助けたいから
 そのまま走ってくれる?」

 息荒いまま、手短に話してきたのは、奴らとは違った。

 思わず目を見開いて手を掴んだ主を見た。

 彼がどうして、あたしを助けようと思ったのか分からない。

 けれど、今は後ろから聞こえる足跡を巻く事だけを考え、全力疾走した。

 風だけを感じ、唯、前だけを見据えて。


< 135 / 157 >

この作品をシェア

pagetop