【短編集】フルーツ★バスケット

秘密


「ずっと、あたしを守ってくれる?」

「あぁ。
 約束する」

 ずっと、なんて言葉は気休めでしかない。

 それでも、小さな優しさが嬉しかった。

 あたしを普通の女の子として、認めてくれるの?
 それとも、貴方は誰にでも優しくしているだけ?

 深く問い詰めるのは、止めよう。

 自分が傷つくだけなのだから。

 あたしには、両親がいない。
 幼い頃天国へ行ったって聞かされてきたけど、本当の事は知らない。
 だって、写真すら無いんだもの。

 生きるという意味では、不自由はしていなかった。

 外出する時は、着るものを与えてもらっていたし、3食おやつも規則正しく用意されてた。

 ただ、それ以外は何もない。
 意見を言う事も、自由も、何も。

 ただ、渡されたマニュアルに従うだけ。
 あたしは、商品となって世の男達に貢献してきた。

 勿論、無償。
 だから、サンプル。

 別に嫌じゃなかった。
 みんな、笑顔をくれたから。

 それが当たり前に感じてた。

 だけど、違った。

 あたしだけが、間違った生き方をしていた事に気が付いたんだ。

 だって、聞いちゃったんだもの。

『倫子ちゃんが、何も知らない娘で良かったよ。
 お陰で、俺たちは裕福な暮らしが出来るんだからな』

 ……何?
 あたしのお陰で裕福?

 どういう事?


< 137 / 157 >

この作品をシェア

pagetop