【短編集】フルーツ★バスケット
そういえば、誰かが言ってたっけ?
『君は、羽ばたいていいんだよ』
あの時は、何を言っているのか分からなかった。
けど、今なら分かる。
あの時言葉を掛けてくれた人にもう一度会えるかは、分からない。
唯、あたしは、あたしの信じる道を進む事に決めた。
誰にも、邪魔させないんだから。
今、目の前には温もりを感じる。
彼には、過去を知られたくない。
──ずっと。
「奴らの仲間にされそうで恐かったから」
「悪い奴ら?」
うん。
黙って頷いた。
半分は嘘、半分本当。
何処まであたしを信じているのか分からない。
彼は、それ以上何も聞かず、あたしの髪の毛を
ワシャワシャ、て撫でてきた。
身体のわりに、強くて優しい掌が、温かい。