【短編集】フルーツ★バスケット

 あたしって、厳禁かな。
 さっきまで何を考えているのか分からない瑞希を前にしても、ミズキの話が出ただけで、心が弾むような感覚にされてしまった。

 今は、何を想ってるの?
 遠くを見据える瑞希。

 橙色に照らされた夕日に映し出されてカッコ良く見える。

 即座に首を横にブンブン、と振った。

 きっと、悪い魔法にかかったんだわ。

 でなきゃ、こんな奴をカッコ良いって思ったりしないし。

 けど、


「ねぇ、キスだけならいいよ」

「何、俺が欲しくなった?」

「違うから」

 あたしの即答におもいっきり苦笑している。

 一瞬の沈黙の後、いたずらっ子みたいな顔をした瑞希は


「それなら遠慮なく」

 その言葉に、あたしは、固く瞳を閉じた。

 けれども、あたしが予想していた事態は起きていないみたい。

 代わりに、頬っぺたいっぱいに柔らかくて吸い付く感じ。

 なんだか、安心する。


「さくらんぼ」

 えっ!?


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