【短編集】フルーツ★バスケット

小さな苗木


『なぁ、彩香』

「何?」

 いつもと同じ時間に架かってくる電話の向こうから、

 いつものトーンと違う緊張した声音に、あたしの声も上擦ってしまった。


『好きだよ』

「ありがとう。
 淳の気持ちだけ受けとっておくよ」

『酷ぇな。
 今、冗談だと思っただろ?』

「うん」

 当たり前だよ。
 あたし達、互いに子供がいるんだから。

 本気の恋なんて出来るわけないじゃない。

 そんな事、分かりきっているのに。

 毎日くれるメールと電話をしてくれる貴方に、惹かれつつある。

 今は心のブレーキがかけられるから、大丈夫だよね?

 だって、あたし達

 まだ、一度だって会ったことが無いんだから。

 
 あたし達、彩香(あやか)と、淳(じゅん)は可笑しなチヤットのサイトで知ったの。

 それはまだ、

 寒い冬の事



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