同じ空の下で
「迷い込んだんだね」
僕は子猫の体を撫でてやる。雨に濡れてる様子はないから、僕たちが入ってくる前からここにいたのだろう。
「私にも抱かせて」
真鈴がすぐ隣にやって来た。僕は子猫を真鈴に渡そうとしたけれど、子猫は鋭い爪を立てて僕へと必死にしがみつく。
「痛っ! 痛いよ! ほら、お姉ちゃんのとこへお行き」
「にゃあ〜!」
子猫は頑なに拒んだ。僕も痛さの限界だったし、真鈴に渡すことは諦めた。
「駄目みたい。恐がってるんだよ、何故か」
「そう……変なの」
真鈴がソファへと戻ると、子猫は勢いよく僕から飛び降りた。そして鳴き声をあげながら、部屋の隅へと歩き出す。
「どうしたの?」
僕は子猫を追い掛けた。何かを、僕に教えようとしているんだと思った。
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