同じ空の下で
僕たちは一瞬だけ固まり、僕と妻は目を合わせた。
家に設置した、普段の電話とは別の、緊急を知らせる方の電話の音が鳴り響いている。ペンギンにちらりと目をやったが、すぐに立ち上がり僕は受話器をとった。
「谷口だ。どうした?」
「谷口さん! ヤバイです! 誤作動です!」
藤井だった。僕は電話の上に置かれている大きなモニターに目をやり、その地図の中で藤井がこの電話を発信している場所の点灯を確かめた。そう遠くはない。
「判った。すぐ行く」
「スケートの」
「何だって?」
「スケートの靴を持って来て下さい」
よく判らなかったが、この仕事をしていると判らないことの方が多い。僕は電話を切り、妻に場所を伝え、スケート靴を用意した。ペンギンをどうすればいいのか一瞬迷ったが、いつの間にか僕の鞄を抱えていたので連れていくことにした。
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