同じ空の下で
ペンギンの広げた両手から、強い光が輝き出した。最初、それは暖かくて優しいものだった。懐かしいような、柔らかい毛布に包まれているような温もり。それが少しずつ眩しくなっていき、目を開いていられなくなった頃、僕はふと思い叫んだ。
「どこへ行くんだ? ここはどうなる?」
ペンギンの声は耳からではなく、脳に直接送り込まれるようなイメージで聞こえて来た。
「愛より大切なものがありますか? 大丈夫、あなたたちはきっとうまくやれる」
「だけど、何も持って行かなくていいのか?」
馬鹿馬鹿しいことを言っていると、自分でも思っていた。だけどそんな言葉をすべて言い切る前に、僕の意識は大きな渦へと巻き込まれていった。
常識では説明しきれない事態が起こっている。最後の記憶は、そんな当たり前のことだった。
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