その手紙を読みながら僕の両目からみるみる涙が溢れてきた。

こんなに泣いたのは本当に久しぶりだった。

涙で字がぼやけながらも、僕は何度も何度も読み返した。

その間ずっと泣き続けた。

自分の幼さを、そして愚かさを悔やんで泣いた。


自分でもどのくらい泣き続けたのか覚えていない。

しかしいつまでも泣いているわけにはいかないと思った。

僕は変わりたかった。

変わらなければいけないと思った。

それをエミリーが教えてくれたような気がする。

ようやく涙が止まると僕は立ち上がった。


悲しいときに涙を流すことは誰でもできる。

大切なのはそのあとだ。

そうでなければ流した涙に何の意味もなくなってしまう。
 

僕はピアノに向かった。

ほかにやるべきことがあったかもしれないし、ほかにできることもあったと思う。

でも僕にはこれしか思い浮かばなかった。

そしてある曲の練習を始めた。

それはエミリーが一番好きだと言っていた曲、ショパンのエチュード 作品10の3 ホ長調(注:邦題は別れの曲)だ。

エミリーはこの美しいメロディーがたまらないと言っていた。

僕はこの曲を1週間必死で練習した。

学校があったので朝から晩までとはいかなかったが、それでも可能な限りピアノに向かった。

久しぶりにピアノに触れる僕にとって、とても難しい曲だったが、それでも何とか形にすることができた。





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