揺らぐ幻影

…

ヘッドライトがよく伸びる黒に覆われた時間になると、

途切れることなく窓から注がれる光は目眩を誘い、夕闇時よりきつく感じる。


「サラダバーはセルフに……」
「空いたお皿お下げして……」

平日は土日に比べたら何かと楽で、繁華街付近ではなく地元の店舗のせいか、まあまあ暇な方だ。


そんな日は学生服を着たお喋り重視の長居客が多く、

彼らは口寂しい時にのんびりと注文をするので、早く食べたいと急かす新規客より対応が楽だ。

もちろんこんなぐうたら思考を開口しないが、結衣は基本無気力怠け者だ。


  暇ー……

  ピアス欲しい

  今日TVなにっけ

紺色のチェックのワンピースに白いエプロンはいかにもといった具合に可愛くて、

コスプレ願望はないけれど、制服重視でこのアルバイトを選んだようなものだ。

結衣はお気に入りだし、地元の友人周りにもウケが良いので、社交辞令がてらよく褒められる。


思い返せば入学当初、女子高生になれば学校で彼氏が出来ると思っていた。

ただ歩くだけでクラスメートの男子が惚れてくれるもんだと信じて疑わなかった。

だが、残念なことにそんな薔薇色な出来事はなく、単調な日々ばかりが過ぎた。


だから結衣は新たにアルバイト先で出会いを探そうと、

今の職場を選んだという不純な動機を思い出す。

確か履歴書には、美味しかったと笑顔で言われる充実感を味わいたいなんて記入したはずだ。


ついでに言うと、下見した時に従業員の人がかっこよかったし、

お客さんも同世代が多そうだったし要するに皮算用めいた志願だった。


――不思議だった。

  バイトじゃなく学校とか、

  ……近藤くん好きになるんだもんな

  変なの


何がどうなるか、この先どうなるか――


感嘆に耽る彼女は、今が勤務時間中と言うことをすっかり忘れているらしい。

だからぼんやりとした物憂い表情は、当然近藤の顔を思い描いているからで、

結衣は乙女らしくオメデタ恋愛脳みそなので、ホッペを染めていた。

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