一なる騎士
 王都攻略の主力となる一万の軍を率いているのはセイファータ公爵だった。リュイスの片腕として軍に参加したはずの公爵の嫡子エイクも今は父の隣にいるはずである。どうにも馬に乗るのが下手な彼はリュイスの軍についてこれなかったのだ。

 しかし、お陰でセイファータ公爵の動向が筒抜けなところを見ると、どうも馬術が苦手というのも本当のところどうだかしれたものではなかった。いくつ隠し玉を持っているのか。相変わらず捕らえどころのない男でもあった。

「そうか。ならば明日はいよいよ王都攻略だな」

「ここから先は簡単にはいかないでしょう。あの警備隊長、いえ今は騎士団長のアスタート殿が、簡単に王都を明け渡すとは思えない」

 王都の守りが抜かりなく固められているのは、アスタートの人望によるものが大きかった。彼がいなければ、王の直属の騎士団とはいえ、とっくに『一なる騎士』の軍に投降してきてただろう。

「そうだな」

 リュイスのあっさりとした答えに、精霊使いの長は訝しげに目を瞠った。


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