ボーダー
若あゆはすごく充実して楽しかった。

1日目は、ピザ作りやカヌーなどの体験学習を行った。
カヌーの際にオールでの操作をミスって、ハナが海に落ちたのを助けてやるとにっこり微笑んでお礼を言われた。
オールを漕ぐときに手が触れて心臓が跳ねた。
気になる女とやるものじゃないな、カヌーは。

案の定、うっすらと服の下が透けていたので、隠すためにタオルを渡してやった。

いくら班の奴らでも、矢榛や早川に、ハナの下着を見られたくなかったのだ。

大浴場では、年齢に相応しい、下世話な会話が行われていた。

誰のが大きいだの小さいだの、くだらない。
そんなので張り合ってどうする。

将来的に、女子の誰がいい女に成長しそうなネタに話が飛んだときは、興味ないとばかりに、浴槽から上がって着替えた。

「ナナちゃんは、絶対いい女になる!
今もいい女だー!」

叫ぶような矢榛の声が聞こえた。
これで、霧生のことが好きなの、学年全員にバレたな。

そして彼は、先生にガミガミ怒られていた。

ハナと霧生を誘って、男子部屋でウノをやっている。
いいところで先生が点呼にやってきた。
もうすぐでオレの勝ちが決まりそうな場面だったのに。

「すみません!
評議委員として、食券を間違えたとかって、言い争い始めちゃったんで、仲裁してたんです!
もう済んだことなのに……」

ハナの必死の口実でごまかし、事なきを得た。

「おお、そうか。
まぁ、女子を巻き込むのも程々にしろよ。
霧生と蒲田は早く自分の部屋戻れよー?

そして男子!早く寝ろよ!」

何とかごまかせたようだ。

ウノが終わると、男子部屋から帰ったハナと霧生。

「おやすみ。」

なんだか、集団生活なだけなのに、こうしておやすみをハナに言えるのが嬉しい。
軽く頭を撫でてやると、ハナは顔を真っ赤にしていた。

ハナは、2日目のキャンドルファイヤーの本番前に緊張していたようだ。
オレはハナの幼なじみだからこそ知る、昔からのクセを、彼女に教えてやる。

「ハナは、不安になったり緊張したりすると肩に力が入って、体がビクつくんだ。
いいんだ、リラックスしろ。
出来ないなら、何かできることがあれば手伝ってやる。」

ハナの頭を撫でてやると、少し落ち着いたらしい。
抱きしめたりしてやりたかったが、一応、学年全員が集まる中で、それはまずい。

全員に好意を告白しているようなものだ。

出し物が無事に成功すると、ハナと軽くハイタッチをした。

そんな中、この若あゆでわかったことがある。

霧生とつるんでハナをいじめていたグループの人間が隣のクラスにいる。
そいつは、若あゆの夜に何らかの計画を立てていた。
他の女子も手駒に使われる可能性がある。

実際、若あゆ2日目の朝に遅刻して食堂に現れ、先生から大目玉をくらっていた。

コイツらの動向には、注意しなければならないな。
エージェントルームで、調べてみるか。
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