ボーダー
それから、冬も過ぎて春になろうという日。

高校2年生の私たちは、上級生である3年生の卒業式に出席することになっている。

3年生の卒業式を見送ったところで、教頭先生がマイクを受け取り、話した。

「高校2年生だが、この学園から去るものがいるため、この場で臨時で卒業式を行う!

業と宝月!
ステージに上がるように!」

「はい。」

2人で声がハモるのが、何ともラブラブで羨ましい。

「宝月 蓮太郎。
業 冥。
貴殿らは、特別にこの学校の特待生兼留学生として、本校に多大な功績をもたらしたことをここに表彰する。
この証書を持って、特別に卒業とみなすものである。

おめでとう。」

2人で揃って礼をして、証書を受け取ってステージから降りる。

2人とも、タイミングが揃いすぎている。

そして。

マイクは、放送部、レンの後輩に渡された。

「蓮太郎先輩!
冥センパイ!
この春で会えないのは寂しいですが、僕たちのことをお2人には忘れてほしくないので、特別に映像を作りました!

今から、お見せします!」

後輩くんの合図とともに、私が照明を落とす。

プロジェクターは、真くんと一成くんが運ぶ。ミツが指を鳴らすと、映像が始まった。

映像が、レンが入学式で行った新入生代表の言葉から始まり、宿泊オリエンテーションにインキャン、レンのメイちゃんへのプロポーズの映像、日米同時会見の映像。
そして修学旅行。

学校生活の様々なレンが切り取られていた。
途中からはメイちゃんも。

『レン、そしてメイちゃん。
この学校で培った絆は、一生変わらないと思ってます。
何か辛いことや苦しいことがあったとき、この映像を見て、少しでも前向きに生きてくれると嬉しいな、と思います。』

私のナレーションで締めて、映像は終わっていた。

『ハナ、ミツ、お前らさ。
ほんとに最高すぎ!

お前らみたいな幼なじみと親友持てて、可愛い婚約者も持てて。
幸せだわ。

ありがとう!』

あれ、レン、ちょっと涙目じゃない?
気のせいかな。

モロモロ終わって、明後日に日本から発つという、レンとメイちゃん。

レンの別荘で、一足早い2人の卒業と、挙式に向けて準備も進めるだろうから、いつでも協力するという意味も込めてパーティーをした。
友佳や麻紀、一成くんや真くん、愛実に和貴くんも参加者だ。

あの映像の裏話を、たくさんしていた。

「ありがとな。
いつでも来いよ、アメリカ。
来る前に連絡くれれば、もてなす準備くらいはするし。

あんな映像も見せられて、こんなパーティーまで開いてくれて。

感謝してもしきれねー、ってやつだな。」

「あなたたちなら、いつでも大歓迎よ?」

そう言って、パーティー運ぶお開きになり、各々好きに集まって時間を過ごした。

女子は同性同士で集まって女子会だ。

「んで?
和貴くんとはどこまでいったわけ?
修学旅行以降。」

「え?
まだ未遂だし、告白とほぼ同時のキス以上は何も……?」

何も、と言うときにそっとスカートの裾を掴んだ愛実。
もしかして?

「バージンは奪われてないけど、それに近いところまではしたのね?」

「日和っちゃった。
痛い、って聞いてたし。」

「痛いわよ?
蓮太郎なんて、いつもでも大きさあるのに、スイッチ入ると余計だもん。

蓮太郎の場合は復活も早いし。」

浴室や部屋で年頃の男の子がするような会話が展開される。

バチェロレッテパーティー当日も、ときどきこんな感じの話になるのだろう。

これから、進路や受験で忙しくなるけど、そっちの話し合いも、していかないとなぁ。

ウィッシュリストは届いたけど、そこまで高価じゃないものもあったし。

ホットプレートとか、コーヒーメーカーとか。
選ぶ楽しみも増えそうだ。

ルームウェアは、ウチらでもお年玉でもらう一番大きい額のお札を3枚くらい飛ばさないと手に入らないところのだろうけれど。

進路について聞くと、麻紀は調理師学校に進学するようで、友佳は高卒で働くらしい。

友佳は、美容室での受付兼、作業補助のバイトをしているらしい。

どうりで、最近友佳だけ声をかけても来る頻度が少ないと思ったんだ。

ちょっとでも稼いで、早く彼氏である一成くんと同棲して、何なら籍を入れたいよう。

私は、他人の人生にどうこうケチをつけるつもりはない。

むしろ応援したい。
頑張れ、友佳!
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