ボーダー
着いた先は、ミツの家。
不思議がる私に、風邪引くだろ?と優しい笑み。

タオルを持ってミツの部屋に入ると、同時に、Tシャツを脱ぎ捨てる彼の姿。

「きゃあ!!
仮にも女の子の目の前で脱がないでよ!!」

「下は履いてるけどね?
何ならこの下も今、ここで脱ぐか?
って、それは冗談。
ってか、先お風呂入ってくれば?」

部屋のドアは閉めたので、外からドアをノックしながら彼に言う。

「ミツこそ風邪引いちゃうって!!
そんな格好で……」

「オレは大丈夫。
バカは風邪ひかない、って言うだろ?
レディーファースト。
ハナが先に入れよ。
あ、着替え適当に置いとくから。」

「うん。ありがとう。」

はあ。
シャワーを浴びながら、さっきの光景を思い出す。
男の人の裸って、未だに慣れない。

直視してられない。
あの日、ミツに抱かれたときも、途中から……記憶がないんだよね。

こんなんで……いいのかなぁ。
まだ幼くて、色気は全然ないけど、見惚れてしまう。
相手がミツだからかもしれないけど。

シャワーを浴び終えて脱衣場に出ると、私の着替えの上に丁寧なメモ書き。

"ハナのお母さんに頼んで着替え持ってきてもらったから。"

ミツ、優しすぎだよ。
しかも、優しいのは私にだけ。
私だけ、特別なのかな、って自惚れちゃうよ。

私以外の他の人にも、もうちょっと優しくしていいんだよ?

タオルにくるまって微笑んでいると、ドアが開いた。
慌ててタオルを押さえる。
その主は、ミツのお兄さん。

「あ、ごめんね?
華恵ちゃん。
華恵ちゃんがいること知らなくて……」

お兄さんも、ミツと同じようにずぶ濡れだ。

"水も滴るイイ男"という言葉があるが、ホントにその通りで、カッコイイと胸を弾ませる。

ミツのお兄さんはシャワーを浴び終えると、飲み会だからと足早にまた出かけて行った。

「あのさ、オレはシャワー浴びてくるから、食事行く用意しときな?
さっき兄さんに2000円もらったし。」

「いいよ。
私が適当に冷蔵庫の中のもので何か作ろっか?」

「大丈夫。オレが奢りたいの。
いつもハナにはお世話になってるし。」

ミツも用意を終え、二人でイタリアン料理のレストランへ。

食事を終えると、偶然、伊達さんと明日香さんに会った。

二人に車で送ってもらった。
明日香さんは諸事情により、伊達さんの家に泊まっているらしい。
エージェントルーム、社員同士の恋愛、禁止なんじゃなかったっけ?

家に帰ると、ミツのお兄さんはまだ帰っていなかった。
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