ボーダー
「メイも、楽しめたなら良かった。」

「いろいろ協力してもらって、逆に悪かったわね。
おかげでとっても楽しかったわ。」

「オレたちもだ。
こんな感じで、バカ騒ぎもできなくなるな。

沖縄旅行前後のが本当にベストタイミングで、デキてたとしたら。」

「もう、蓮太郎ったら!」

「そう考えると、ちょっと不安か?メイ。

実はオレも。

そりゃそうだよな。
まだ未成年だぜ?
オレたち宝月グループの株主たちはどう思うかなんて、超能力者じゃないから分かんないけどさ。
子供が子供産むようなものだもんな。

でも、なんとかなるっしょ。
オレとメイなら。

親友も、頼れる大人もいるしな。

さっきの、編集得意だ、って言ってた男性の奥さん、子育てにてんやわんやらしいけど。
その人からアドバイス貰えるだろうから。

そんな感じでやっていこうぜ。

不安が消えたところで、仕事しようか。」

「うん。
それには賛成。
1つ聞いていい?
何で知ってたの?

私、蓮太郎の前で不安だなんて一言も……」

「んな初歩的なこと聞く?
この期に及んで?

オレ、メイの旦那だぜ?

奥さんが何を考えてるかなんて、何となく分かるの。

妊娠だの子供だの、の話をしたとき、決まってメイは眉を下げてたしな。

それで何か不安な感じかな、ってピンときたんだけど、それで合ってる?」

「……150点満点、ね。
後でデキる旦那さんにはご褒美あげないとね?
何か考えておいて?」

「……今日は疲れてるだろ、お互いに。
挙式前日、メイを予約、ってことでどう?
1回で終わらせるから。」

「……もう。
旦那さんのお願いなら、喜んで。
さぁ、時間は有限よ?
仕事しましょ。」

「……だな。」

仕事とは、あの日の会見終わり、メールフォームから寄せられた質問に答える、というもの。

おめでたい場を壊さない質問を選び、それをバラエティー番組よろしくフリップに書いて、それに答えていく。

それを、タイミングが合うときに式場で流すのだ。

宝月グループの株主たちは、今回式には呼んでいないので、彼ら向けのサービスをしたい、とメイが発案したのだ。

今日は、その質問の選定、というわけだ。
実際に何にどう答えるかも、この場で打ち合わせて、明日には映像を撮る。

映像の編集は、柏木さんに任せることになっているので、余裕を見なければならない。

頼んだジャスミンティーと、蓮太郎の分の紅茶をテーブルの脇に寄せて、質問の選定をする。

「……何だこれ。
『そのうちお子さんを、とお考えかもしれません。
その際、希望の性別や人数等はありますか?』

だって。
いきなりこれかよ。」

「……特にないな。
健康に育ってくれればそれでいい。
んで、1人、ってことはない。
最低2人だよな。」

「私もその認識よ。
1人は少ないわね。
かといって、3人も手いっぱいになる、って考えると2人が良いって思うわ。
もちろん、何年か感覚を空けてね。」

「こうやって、質問に答えていく形式だと、自分の考えも整理しながら喋れる。
不安もちょっとはなくなるだろ。」

頭を撫でる蓮太郎。
その手の大きさと温かさは心地いい。

その後にもいろいろな質問に答えて、私以外の皆がいないフロアの部屋を使用し、動画も撮影した。

動画撮影が終了したら、再びカフェに戻って、淹れ直されていたジャスミンティーと紅茶に手をつけた。

その日は準備とパーティーではしゃいだ疲れが出たのか、2人でシャワーを浴びたあと、すぐに眠りについた。

準備と最終チェック、ブライズメイドとアッシャーを招いて、本番前日の入念なリハーサルをして、ついに挙式当日の朝を迎えた。
< 313 / 360 >

この作品をシェア

pagetop