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新郎新婦の紹介は、私と蓮太郎がパワーポイントで作成した資料を投影しながら行われた。

「過去には、本日、アッシャーを纏める役割をされております、ベストマンの御劔 優作様と、恋の火花を散らしたこともございます……」

そこで会場が笑いに包まれた。
司会者のアドリブ、ナイス。

「本日、新婦自らがぜひスピーチを、と指名された、蒲田 華恵様。
スピーチをお願いいたします。」

司会者から促され、ターコイズブルーのドレスを着たハナちゃんが壇上に上がる。

ネイビーのパンプスと、胸元に着けられた白いマーガレットを模した花がとても素敵だ。

『この度は、新婦、冥さん並びに新郎、蓮太郎さん、この度はご結婚おめでとうございます。

ただいま、ご紹介にあずかりました、蒲田 華恵と申します。
僭越ながら、新婦の友人でもあり、なおかつ新郎の幼なじみでもある私が、お祝いの言葉を述べさせていただきます。

冥さんは初めて会ったときから理知的で、とても冷静沈着なところが魅力的だなと感じています。
私自身が持ち合わせようと思っても難しい部分でもあるので、心の底から冥さんを尊敬しています。
およそ2週間前に、新郎新婦含め数名で行った沖縄旅行でもそれは感じました。

私の親友が沖縄旅行の部屋で悩みを打ち明けたとき、私は感情的に諭してしまいましたが、冥さんはそれをせず、淡々と話を整理しながら上手く問題解決へ導いていました。

そのような姿勢に、新郎である蓮太郎さんは魅力を感じたのだろうな、ときに私は思っています。
新郎の幼なじみの私から言わせてもらうと、彼は正義感が強すぎて突っ走る行動をしてしまうことがあります。
そんな彼のブレーキ役に、冥さんがなってくれると信じています。

これからも、親友として、新郎の蓮太郎さんの隣で幸せな生活を送る冥さんを横で見守らせてください。

新郎の蓮太郎さん。
私の親友である彼女は、悩みや不安をなかなか口にしたがらないので、定期的に甘えさせてあげてください。

お二人なら、きっと幸せな家庭を築いていけると信じています。
私はいつでも、お二人の味方ですので、何かあればいつでも相談してください。
本日は誠におめでとうございます。』

一礼して、拍手の中、ハナちゃんが席に戻っていった。

席につくなり、婚約者である御劔くんに何やら言われて照れている彼女。

きっと、夜にとびきり甘いご褒美を貰うのだろう。

蓮太郎側にも、御劔くんからスピーチがあり、会場は温かで和やかな雰囲気に包まれた。

そして、乾杯の音頭を取るのは村西さんだ。
彼は私たちとトーンを合わせたかったのか、ネイビーのスーツを着ている。

『新郎の蓮太郎さんと同じ勤務先の上司、村西 翔平と申します。
僭越ながら私が乾杯の音頭を取らせていただきます。
本日はお日柄も良い中、お二人の新しい門出に立ち会えて大変嬉しく思います。

蓮太郎さんは、大変真面目で、なおかつ客観的な視点の持ち主で、私たちが見落としがちな部分にもよく気がついてくれます。
この視野の広さは、新婦の冥さんと一緒にいるようになってから磨きがかかったように思います。

だからこそ、安心して見守っていけるなというのが今の正直な思いです。

これからはお二人の力を持ち合わせて幸せな家庭を築いていってください。

お二人の新たな門出を祝しまして、乾杯をしたいと思います。
乾杯!』

もちろん未成年なので、グラスに入っているのはジュースなのだが、それでも、そんなことも気にならないほど場は盛り上がった。
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