ボーダー
成人式の翌年。
葉が紅く色づく季節に、矢榛とナナちゃん。
クリスマスがある月に、将輝と由紀ちゃん。
結婚秒読みだったカップルたちが、ついにゴールインとなった。
季節がバラけたため、様々なドレスを着れたこと、彩を連れて挙式に参加できたことも、メイにとって、いい気分転換になったようだ。
将暉と由紀ちゃんからの結婚式の招待状が来た秋のこと。
奇しくも、ナナちゃんと矢榛の結婚式の翌日のことだった。
メイから嬉しい報告があった。
「彩を寂しくさせないことが確定したわ。
もうひとり、家族が増えるの。
生まれるの、来年の7月頃よ。」
メイが妊娠したようだ。
彩に、弟か妹ができるのだ。
「メイ、ありがとう。
最高すぎる奥さんだ。」
奈斗と有海ちゃんは、タイミングが掴めず、挙式が桜の咲く頃になってしまった。
籍だけはとっくに入れていたようだが。
……もちろん、プライベートで奥さんと愛娘を溺愛するだけではない。
仕事もしっかりやっている。
今は、大きく2つ。
1つは、俳優兼アイドルタレント。
俳優のため、曲を作るペースは遅いが、整った顔のおかげで、若い女子からの人気を集められた。
これは、成人式を迎えた後、兼ねてから持ち上がっていた、俳優かつアイドルをやろう、という発案から始まった。
様々な人たちとの話し合いの末に、本格的に構想を練り終わったため、社長に直談判をした。
もう18歳になっている、勇馬と良太郎もメンバーに引き入れるべく、一緒にだ。
曲を作るペースは遅いほうだが、出せばそれなりには売れる。
そしてもう1つ。
かつては養護施設だった賢正学園を、廃校する公立学校の土地だけではなく、近隣の廃工場の土地も買い上げて、中高一貫の私立学園を建設した。
中高一貫と言っても、中学生と高校生の校舎は離れたところに作った。
澪さんによると、中学生と高校生のそれぞれが歳上や歳下と交流したことがある人間ばかりじゃないから、それは考慮するべきと言われたからだ。
また、高校生と中学生の恋愛を助長する可能性も考えた。
学生の本分は勉学なのだ、同学年や先輩後輩ならともかく、歳下との色恋沙汰はまずい、ということだった。
オレとしては、色恋沙汰も人間的に人を成長させるから、むやみに制限するつもりはない。
仮にあったとしても、妊娠させたなどでなければ黙認するつもりでいる。
しかし、イジメは論外だ。
この学園を表向きは私立の学園だが、公立学校の自由さも持ち合わせるような学園にしたいのだ。
イジメは徹底的に叩き潰す。
何しろ、イジメという軽く捉えられる言い方をされているが、行為によっては犯罪に等しいからだ。
そこはきちんと律するつもりである。
FBIに所属していたこともあり、愛する妻も法廷に立つ検察官なのだ。
この学園は、入学する子供を人間的に成長させる場であらねばならない。
理事長はなぜかオレになっている。
経営に携わる仕事は副理事長に任せてよいと言われたので、そうしている。
副理事長は、倒れそうで何とか持ち堪えている会社の息を吹き返させた、経営の鬼と呼ばれた男性なのだ。
オレは、理事長として生徒の前でのスピーチや退学しそうな生徒の引き留め等を担うこととなった。
『正しい明瞭な知識を身につけて、常に他人への配慮が出来る、賢い人材であれ。』
それを、この学園の理念としたことに伴い、学園の名前も『賢正学園』から、『正暸賢高等学園《せいりょうけんこうとうがくえん》』に変更した。
まずは生徒の実績を作らねばならない。
理事長として話し合いに参加しながら学校としての基盤を作るべく奔走した。
2つの仕事に追われる中、オレとメイの2人目の子供が生まれた。
子供が男の子ということもあり、蓮太郎っぽい名前にしたいというメイと一緒に、名前を考えた。
「男の子なら、オレに似て麗しい子に育ってほしい、って想いはあるんだ。
麗って漢字と、オレの祖父の名前の字から拝借して、麗眞《れいま》。
宝月 麗眞《ほうづき れいま》ってどうだ?」
「いい名前ね。」
麗眞が産まれた年の秋。
司法試験にちゃんと合格した、というハナとミツからの知らせが届いた。
司法試験が終わっても、翌年の4月から司法修習生として研修をこなし、試験を突破しなければ法曹界には足を踏み入れられないのだ。
麗眞が産まれてから家族4人で年明けを迎えた。年明けしてすぐにミツが、オレとメイが書いたこともある書類を持参して、宝月邸を訪れた。
「先に理想の夫婦になったお前たちに、証人欄へのサインを頼みたい。
後は、オレの大事な婚約者に名前欄を埋めて印を貰えば、この書類は完成だ。
頼んでもいいか?」
「何だよ、そんなことか。
お前らが入学式の前に、ここに2人で来たとき言ったろ、大事な幼なじみに恩返しするって。」
オレはミツの手から婚姻届を奪うと、黒いボールペンで証人欄にサインをして、印を押した。
「お前らさ、挙式どうするわけ?
司法修習生、1年4ヶ月もやるんだろ?
待つのがもったいない。
司法修習生の貴重な休日使って、挙式すればいいのによ。」
「覚えることもいっぱいよ。
そんな余裕はないでしょう、とも言い切れないのよね。
司法修習生終えてからが大変、って言うし、安定するのを待っていたら、子供産めるタイミング逃しちゃうわよ?
御劔くんがどちらを取るか、ね。」
メイが、リビングに降りてきた。
しっかり麗眞を抱えている。
「お、麗眞くんか。
レン、お前に似てイケメンになりそうだな。
……2人の子宝に恵まれて、幸せそうなお前らを見てて決めたよ。
宝月夫婦とか、他の夫婦にも協力してほしい。
オレの婚約者には内緒で。
いいかな?」
オレとメイは、顔を見合わせて微笑んだ。
葉が紅く色づく季節に、矢榛とナナちゃん。
クリスマスがある月に、将輝と由紀ちゃん。
結婚秒読みだったカップルたちが、ついにゴールインとなった。
季節がバラけたため、様々なドレスを着れたこと、彩を連れて挙式に参加できたことも、メイにとって、いい気分転換になったようだ。
将暉と由紀ちゃんからの結婚式の招待状が来た秋のこと。
奇しくも、ナナちゃんと矢榛の結婚式の翌日のことだった。
メイから嬉しい報告があった。
「彩を寂しくさせないことが確定したわ。
もうひとり、家族が増えるの。
生まれるの、来年の7月頃よ。」
メイが妊娠したようだ。
彩に、弟か妹ができるのだ。
「メイ、ありがとう。
最高すぎる奥さんだ。」
奈斗と有海ちゃんは、タイミングが掴めず、挙式が桜の咲く頃になってしまった。
籍だけはとっくに入れていたようだが。
……もちろん、プライベートで奥さんと愛娘を溺愛するだけではない。
仕事もしっかりやっている。
今は、大きく2つ。
1つは、俳優兼アイドルタレント。
俳優のため、曲を作るペースは遅いが、整った顔のおかげで、若い女子からの人気を集められた。
これは、成人式を迎えた後、兼ねてから持ち上がっていた、俳優かつアイドルをやろう、という発案から始まった。
様々な人たちとの話し合いの末に、本格的に構想を練り終わったため、社長に直談判をした。
もう18歳になっている、勇馬と良太郎もメンバーに引き入れるべく、一緒にだ。
曲を作るペースは遅いほうだが、出せばそれなりには売れる。
そしてもう1つ。
かつては養護施設だった賢正学園を、廃校する公立学校の土地だけではなく、近隣の廃工場の土地も買い上げて、中高一貫の私立学園を建設した。
中高一貫と言っても、中学生と高校生の校舎は離れたところに作った。
澪さんによると、中学生と高校生のそれぞれが歳上や歳下と交流したことがある人間ばかりじゃないから、それは考慮するべきと言われたからだ。
また、高校生と中学生の恋愛を助長する可能性も考えた。
学生の本分は勉学なのだ、同学年や先輩後輩ならともかく、歳下との色恋沙汰はまずい、ということだった。
オレとしては、色恋沙汰も人間的に人を成長させるから、むやみに制限するつもりはない。
仮にあったとしても、妊娠させたなどでなければ黙認するつもりでいる。
しかし、イジメは論外だ。
この学園を表向きは私立の学園だが、公立学校の自由さも持ち合わせるような学園にしたいのだ。
イジメは徹底的に叩き潰す。
何しろ、イジメという軽く捉えられる言い方をされているが、行為によっては犯罪に等しいからだ。
そこはきちんと律するつもりである。
FBIに所属していたこともあり、愛する妻も法廷に立つ検察官なのだ。
この学園は、入学する子供を人間的に成長させる場であらねばならない。
理事長はなぜかオレになっている。
経営に携わる仕事は副理事長に任せてよいと言われたので、そうしている。
副理事長は、倒れそうで何とか持ち堪えている会社の息を吹き返させた、経営の鬼と呼ばれた男性なのだ。
オレは、理事長として生徒の前でのスピーチや退学しそうな生徒の引き留め等を担うこととなった。
『正しい明瞭な知識を身につけて、常に他人への配慮が出来る、賢い人材であれ。』
それを、この学園の理念としたことに伴い、学園の名前も『賢正学園』から、『正暸賢高等学園《せいりょうけんこうとうがくえん》』に変更した。
まずは生徒の実績を作らねばならない。
理事長として話し合いに参加しながら学校としての基盤を作るべく奔走した。
2つの仕事に追われる中、オレとメイの2人目の子供が生まれた。
子供が男の子ということもあり、蓮太郎っぽい名前にしたいというメイと一緒に、名前を考えた。
「男の子なら、オレに似て麗しい子に育ってほしい、って想いはあるんだ。
麗って漢字と、オレの祖父の名前の字から拝借して、麗眞《れいま》。
宝月 麗眞《ほうづき れいま》ってどうだ?」
「いい名前ね。」
麗眞が産まれた年の秋。
司法試験にちゃんと合格した、というハナとミツからの知らせが届いた。
司法試験が終わっても、翌年の4月から司法修習生として研修をこなし、試験を突破しなければ法曹界には足を踏み入れられないのだ。
麗眞が産まれてから家族4人で年明けを迎えた。年明けしてすぐにミツが、オレとメイが書いたこともある書類を持参して、宝月邸を訪れた。
「先に理想の夫婦になったお前たちに、証人欄へのサインを頼みたい。
後は、オレの大事な婚約者に名前欄を埋めて印を貰えば、この書類は完成だ。
頼んでもいいか?」
「何だよ、そんなことか。
お前らが入学式の前に、ここに2人で来たとき言ったろ、大事な幼なじみに恩返しするって。」
オレはミツの手から婚姻届を奪うと、黒いボールペンで証人欄にサインをして、印を押した。
「お前らさ、挙式どうするわけ?
司法修習生、1年4ヶ月もやるんだろ?
待つのがもったいない。
司法修習生の貴重な休日使って、挙式すればいいのによ。」
「覚えることもいっぱいよ。
そんな余裕はないでしょう、とも言い切れないのよね。
司法修習生終えてからが大変、って言うし、安定するのを待っていたら、子供産めるタイミング逃しちゃうわよ?
御劔くんがどちらを取るか、ね。」
メイが、リビングに降りてきた。
しっかり麗眞を抱えている。
「お、麗眞くんか。
レン、お前に似てイケメンになりそうだな。
……2人の子宝に恵まれて、幸せそうなお前らを見てて決めたよ。
宝月夫婦とか、他の夫婦にも協力してほしい。
オレの婚約者には内緒で。
いいかな?」
オレとメイは、顔を見合わせて微笑んだ。