ボーダー
……ぶっちゃけ、見ちゃったんだよね。
サバオリで先生を探して森の中をさまよっているときだった。
ナナと矢榛くんが、サバオリそっちのけで2人の世界に入っていた。

……キスしてた。
割と深いやつ。

ちょっと憧れかも。

深夜3時頃になって戻ってきたナナ。

「信二がヒルに噛まれちゃったみたいで……」

って言ってたけど、

首筋にはくっきりと紅い痕が残ってた。

何があったかなんてすぐわかる。
なんか中学生にしては色気が溢れ出てたしね。

絶対……

矢榛くんと……

キスの、さらにその先をしてたんだ。

……よくバレなかったな。

キャンプ最終日の朝、矢榛くんの足に包帯が巻かれてた。

ヒルに噛まれたことは間違いないみたい。
彼は朝食のときもヒルがいやしないかとビクビクしてたけどね。
この2年間の思い出を胸に村を後にした。


塾に帰ってから行われた2次会。
有海が寝ながら時計の針みたく回転してて皆迷惑してた話をする。
本人は記憶がないらしくかなりビックリしていた。

「その寝相の悪さ、早く何とかしないとね!」

「そうそう。
将来もし奇跡的に奈斗くんと結婚出来たらさ、その寝相の悪さじゃ困るよ?
奈斗くん、逆にベッドから落としそうだし。」

有海は、由紀やナナに冷やかされて、真っ赤にした顔を伏せていた。

男子も男子で、矢榛くんが2日目の夜に、寝言でナナの下の名前を呼んでた話がミツによって暴露された。
それにより、ナナと矢榛くんが付き合っていることが塾の全員にバレた。
皆に散々冷やかされてたっけ。

「公認の仲、いいじゃん。」

「そうだぞ、長い歴史の中で塾生同士のカップルは意外にも初だからな!」

先生たちは冷やかしのネタを見つけたようで浮ついていた。

長いようで短い夏休みが、あっという間に終わり、受験にスパートをかけていく時期に入った。
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