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そんな中行われた体育祭。私のクラスは総合優勝、合唱コンクールでも優秀賞を獲れた。

話によると、富岡先生は私たちのクラスが歌う前から泣いていたらしい。
堂々と舞台に立っていた姿が印象的だったんだって。

そしていよいよ年が明け、高校受験の日。

私とミツは、英語教育に力を入れていて、海外帰国子女を受け入れている私立高校を選んだ。

この高校に入れば、場合によっては、アメリカで有意義に過ごしている彼と3人で学生生活を送れるかもしれないって考えたんだ。

それを話すと私の両親も先生もあっさりと受験を勧めてくれたことを憶えている。
それから、必死に勉強してきた。

ナナと矢榛くんと美麗は地元の高校を選んだ。

有海は、地元からは遠くなるけれど、大学まで見据えて、音大輩出者を多く出している高校に推薦で受かっていたという。

由紀と理香は、地元ではかなりレベルの高い高校を受験するという。
私が志望するところよりも高い。

理香は、自分の祖父がやっている動物病院を継ぐため、理系に強い高校へ進学するのだ。

由紀は、私たちの中では唯一、単位制高校に進学する。
早めに単位をとって卒業して、アメリカに心理学のイロハを学びに行くのだという。

皆、将来のこと考えてるなぁ。

頭がいい由紀と理香なら、きっと受かるはず。
この2人は、さほど勉強に苦労している様子はなかった。
きっと大丈夫だろう。

地元の駅に集まって皆で励まし合ってから、それぞれの会場に向かった。

面接で自分の思いのたけを精一杯伝えた。

……面接官がレンの話をしている時だけ身を乗り出していたのがやけに気になった。


そして2週間後。

結果発表の日。

合格したのは……

私とミツとナナ。

更に、理香と美麗。

受かると思っていた由紀がまさか不合格だなんて信じられなかった。

内申点も申し分なかったのに。

矢榛くんも落ちてしまったという。

富岡先生と由紀、矢榛くんは1日に何回も面談していた。

そして……
後期入試当日。

ずーっと上手くいくように願ってた。

由紀も矢榛くんも手応えバッチリらしいと電話があった。

発表の日。

皆学校に行って、2人からの報告を待つ。

……2人とも合格したらしい。

由紀なんか目が腫れるんじゃないか、ってくらいに泣いていた。

先生に報告し、塾に出向いて報告してお祝いの言葉をもらった後、そのまま皆でカラオケに興じた。

そして……

月は変わって3月。

私たちは、中学校を卒業した。

一人一人の名前を目を赤くしながら呼ぶ先生の姿を、しっかりと目に焼き付けた。

先生たちに寄せ書きを書いてもらったアルバムは、一生の宝物。

私たち8人の写真が大きく載っていたのがかなり印象的だった。

卒業旅行でディズニーリゾートのホテルに泊まったときに聞いた話。

由紀は、
富岡先生のことがどうしても忘れられなかったようで、卒業式の日に、修学旅行のときに理香に言われたように告ったらしい。

だけど、結果は玉砕。

実は富岡先生には、婚約間近の彼女がいるらしかったのだ。


皆で励ました。


由紀ならきっと……


大丈夫。

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