ボーダー
皆が集まって、朝は先生に注意されて出来なかったウノをやった。

真が、私の手をガッチリ繋いで部屋に入る。
すると、皆から冷やかしの声が上がった。

「お楽しみ中だった、って言ったろ。
ポテチ1袋おごれよ。
賭けはオレが勝ったんだ。」

優くんが得意気に言う。

「おいミツ、それはないぜ。
一成と協力してわざとふざけて、教師の目をオレたちに向けさせたからこそ、だろうが。
麻紀ちゃんと真が無事にカレカノになれたのはオレのおかげだぜ?

あと、ニブい一成を大浴場近くの休憩所に留めたのもオレだからな。
まぁ、ジュース150円は予想外だったけど。」

「おかげさまで、無事に真は麻紀の彼氏になりました!
ありがと、皆!」

「助かったよー。
ありがとね?」

仲良くお礼を言うと、いいってことよ、とVサインをくれた。

「寝かせないよ?
真くんと何があったか、ちゃんと尋問するからね?」

ハナ、怖い……

「そうそう。
少なくとも、友佳よりは刺激的な体験したんだろうし。
羨ましいなぁ。」

友佳、麻紀をさも羨ましそうに、ジト目で見ないでほしい。

ポーカーフェイスが苦手な友佳が3回負けて、麻紀も1回。
ハナは女子で唯一全勝だった。

なんで、そんなに強いんだろう。

男子陣は一成が2回負けていた。

カップル同士でウノが弱いって……

私の彼の真は負けたのは1回だけ。

優くんと蓮太郎くんが強すぎた。

「そりゃ、優くんは検察官志望だもの。
こんなポーカーフェイスがババ抜きほど必要ないボードゲームごときじゃ負けないよね?

蓮太郎くんも。カガク捜査官は事実だけを冷静に追って分析するんだもの。
感情に振り回されない術ぐらい、身につけてるはずだよね?

友佳、トランプ持ってるからババ抜きやってみる?」

友佳は、ちょっと抜けているように見えるが、洞察力はかなりある。
その洞察力で、相手の動きを読めるから、バスケでフェイントが上手いんだろう。
麻紀も見習いたい。

ババ抜きは、やろうと言った言い出しっぺがやはりビリになった。

ここでも蓮太郎くん、優くんは圧勝だった。

ハナもウノは強かったのに、麻紀や友佳ほどではないが負けていた。

「ミツもレンもいるんだもん。
幼なじみだからお互い、クセはもうバッチリ頭に入ってるし。
やりづらかったな。

まぁ、言い訳してるようじゃ、まだまだってことだよね!」

ハナはいつでもポジティブだ。
そういうところも、麻紀は親友として見習いたい。

「ねぇ、俺ら、そろそろ部屋戻らないと、教師が点呼に来るんじゃね?」

それが、はからずも合図になったようだ。

「コラー!
いつまで遊んでる!
あと10分で消灯時間だぞ!
生活係の相原まで!
何やってるんだ、全く!

早く部屋戻れよお前ら!」

言いたいことだけ早口でまくし立てた風紀委員の顧問は、大股で麻紀たちの部屋から出ていった。

風紀委員の顧問に、何やら話しかけに行った蓮太郎くん。
何かの合図のように、優くんに向かってウインクをする。

「今のうちにイチャついとこうぜ。
朝になるまで顔見れないんだぜ?」

そう言ったのは優くんか一成くんか。

真が麻紀の腕を引いて、クローゼットの中に隠れた。

「おやすみ、麻紀。
おやすみって言えるの、夢みたい。

ちゃんと寝るんだよ?」

「んっ……」

唇が重なって、一瞬舌が絡まる。

「これくらいにしとく。
麻紀が可愛くて、さっき以上のことしたくなっちゃうから。

今度こそおやすみ。

明日も頑張ろ?」

麻紀の手を引いてクローゼットから出してくれた真。

麻紀の方も、何だか夢みたいだよ……

麻紀も友佳もハナも。
三者三様に顔を真っ赤にしながら、各々の彼氏を見送った。
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