ボーダー
そのまま、ガールズトークに突入した。

麻紀は、Tシャツを捲くり上げられてブラの上からとはいえ真に胸を触られたこと、真のアレをズボンの布越しに触ったことを告げた。

経験済みのハナ先生の見解を、じっと待つ。

「近いうちに、ロストバージンあると思うよ、麻紀。
ナプキン用意しておきな?
出ない人もいるけど大方、血は出るから。」

よ、用意しておきます……

「大切にしてほしいな。
今でこそ、古傷になってきてるの、ミツのおかげで。
でも、ハジメテは知らない、好きでもない男に無理やり奪われた。
性暴力、ってやつでロストバージンしたのよ、私はね。

だから、本当に好きな人に心から愛してもらえるって、これ以上ないくらい幸せだから。
ちゃんと噛み締めてほしい。
だから、生半可な気持ちじゃなくて、ちゃんと覚悟が出来たときにするのがいいよ。」

ハナ、そんなことされてたなんて……
全然、知らなかった。

「ごめんね、急にこんなこと。
嫌いに、なったよね?」

麻紀は、ふるふると首を横に振るしかできなかった。

友佳は、ハナの頬をぺし、と叩いた。

「冗談でも嫌いになったとか言わないよ!
どんなハナでも、私の親友であることに変わりはないもん!
許せないのはその男!
ハナは何も悪くない!
だから、ハナが気にすることなんてないの!」

友佳はそう言っていたが、片方の瞳からは涙が一筋、流れていた。

「麻紀も、そう思う。
ハナは、ちゃんと麻紀の親友。
先生でもあるけど。
いろいろ教えてほしいもん。

嫌いになんて、なれないよ!」

麻紀がそう言うと、ありがと!ととびきりの笑顔を見せてくれた。
この可愛い笑顔に、優くんも蓮太郎くんも一目惚れしたんだろう。

そう思わせるほどの、眩しい笑顔だった。

その後も、今の彼氏のどんなところが好きかとか、いつくらいで結婚したいかとか、そんな話題まで飛び出して、話は尽きなかった。

明日、スピーチの本番だと言ったのは友佳だろうか。
スピーチのこと、頭から抜けてた。

麻紀は料理教室で教えてくれる、真のお母さんのことをスピーチする。

もし、さっき話題に上がった通り、真と結婚することになったら、お義母さんになる人のことを、しかも英語でスピーチするのだ。

緊張する……!

緊張したくないなら早く寝ること、と誰かが言った。
ウトウトして、ろくに話を聞いていなかった愛実の声だった気がする。
その通りだと思ったので、麻紀もヘアゴムを解いて、眠りについた。

夢に真が出てきてほしいな、と思ったけれど、そうはいかなかった。

精一杯スピーチしたものの、表彰はされなかった。

優勝は優くんで、準優勝はハナだった。
ちなみに、蓮太郎くんは、英語がペラペラなため除外された。
幼なじみがいるということで贔屓目で見ないようにするため、審査員も出来なかった彼は、少しつまらなそうにしていた。

こうして、インキャンは幕を閉じ、麻紀の中では最高の思い出になった。
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