素敵すぎる上司
エレベーターに乗り込むと、私はロビーのある2階のボタンを押した。


すると、香取さんは地下のボタンを押し、私が押した2階のボタンをポンポンと押してランプを消してしまった。


「え?」


「送ってくよ」


「車なんですか?」


「そうだよ。この間乗ったじゃないか?」


「あの日だけだと思ってました」


「前も言ったと思うけど、電車は嫌いだから」


「飲み会の時はどうするんですか? まさか、酒酔い運転?」


「まさか。そういう日は、車を置いていく」


「電車ですね?」


「いや、タクシー」


「まあ。次の日の朝もですか?」


「いいや」


「電車ですね?」


「いや、実家から車を出してもらう」


「呆れた……」


「ダメかい?」


「ダメとは言えないけど、ズルイと思います」


「ごめん。今度から電車を使ってみようかなあ」


「無理しなくていいです」


はぁー。やっぱりこの人、私とは住む世界が違うなあ……

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