妖(あやかし)狩り~外法師・呉羽&妖刀・そはや丸~
「大丈夫ですよ。先程も言いましたように、お供はちゃんとしますから」

しゃがみ込んで、多子と目線を合わせ、呉羽は穏やかに言った。
多子は濡れた瞳で真っ直ぐ呉羽を見つめていたが、やがて諦めたように、項垂れながらも道を開けた。

「何かありましたら、これを」

呉羽は多子に頭を下げながら、女房に気づかれないよう、そっと小さな紙を手渡した。

「簡単な式です。息を吹きかければ、舞い上がってわたくしの元に参ります」

多子は小さく頷き、呉羽に渡された式神を、大切そうにそっと袖の中に隠した。

呉羽はもう一度多子に頭を下げ、東の対の屋から出た。

「あ。寝殿は、あっちよ」

多子が慌てて叫んでくれなかったら、また呉羽はこの屋敷の中で迷子になるところだった。
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