僕はいつでもキミの傍に
「鈴村……誠?」
近藤さんが少し声を震わせて名刺に書かれた名前を読み上げる。
「彼が瑞穂の事を探っているらしいんです。理由はよく分からないんですが……」
近藤さんに今日の昼間の出来事を掻い摘んで話す。
でも……瑞穂の写真の話はしなかった。
鈴村との出来事の話を続ける間、彼は眉間に皺をよせ、神妙な顔付きで私の話を聞いていた。
「……で、彼は犯人ではないと」
その言葉にコクンと頷いて見せると、彼は混乱したように頭をポリポリと掻いた。
「……で、楠さんは何で僕に連絡をくれたの?古川さんにも内緒って……どうして?」
その問いに静かに俯いてから、小さく口を開く。
「これ以上、瑞穂に辛い思いをさせたくないんです。あの子お母さんが亡くなってから元気が無くて。最近、少しずつ調子も戻ってきていたのに……彼が現れてから……また」
そこまで言うと、私の頬を涙が伝った。
ポトポトと落ちる透明な水滴が、テーブルに小さな池を作る。
「今日、彼と別れた後、瑞穂はずっと泣いていたんです。どんな言葉を掛けたらいいのか分からなくて、傍に居ても……何も出来なくて」
グッと拳を握りしめそう言うと、近藤さんが小さく頷いて返してくれる。