僕はいつでもキミの傍に
18 鈴村 誠

雨でずぶ濡れの彼女は、まるで恐ろしいモノを見たかの様に目を見開いて俺を見つめた。

「……は、放して!!」

彼女がそう叫び、腕を掴んだままの俺の手を振りほどこうとする。

「落ち着けって!俺はあんたの敵じゃない!!」

俺のその言葉に彼女は困惑した表情を見せ、それから不安そうに俺の後ろを見つめた。

「……何かあったのか?」

彼女と同じように後ろを振り向き、そっと問いかける。

すると彼女はカタカタと微かに体を震わせて俯いてしまった。

その瞬間、遠くから声が聞こえてくる。

その声は彼女の名を懸命に呼びながら……次第に近付いて来た。

「なんで逃げてんだよ?あの声……あんたの彼氏だろ?」

しかしその問いに答えないまま彼女は焦った様に、また俺の手を振りほどこうとした。

……やっぱり、何かあったのか。

彼女の恐怖に駆られた瞳を見つめたまましばらく考えると……彼女の手を強く握った。

「……走れ!逃げるぞ!!」

そう言って急に走り出した俺を彼女は驚いた眼で見つめたが、手を引かれるがまま俺の後を懸命についてきた。
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