ワンダー、フルカラー
「あ、根津さんの家の白米は秋田のメーカーのやつですね。味覚と嗅覚が脳内裁判を起こして訴えています。」
「訴えられちゃったの白米!?」

臼田くんとの夕飯はそれはもうカオスだった。
電車で尋ねてきた白米のメーカーを勝手に当てては満足をし、それから白米に含まれる栄養分について語り出したり…楽しそうに笑っている姿を見ていると、こっちはホッとして落ち着いてしまう。というより力が抜けてしまう。
家にやって来た頃とは比べ物にならないくらい寛いでくれていることに救われた。まだ数時間しか経っていないから何とも言えませんが。
しかし夕飯を早めにしたことには後悔をした…臼田くんのイライラを解消させる為に食事の準備をしたけれど、私自身は全くお腹が空いていなかったのだ。つまり、彼にだけ夕飯を出して後から私が食べてさえいれば、あれから2時間過ぎた現在にお腹が鳴るということはなかったのだから。

(しかし夢のようだ…)

家事もしてお風呂にも入り、臼田くんは2階の父さんの部屋で眠ってしまった為に私はやることも話す相手も失ってしまい、漫画を片手にリビングへとやって来る。
お楽しみ会と称して行った飲み会から帰って来るのを待たなくてはならない…もの凄く迷惑だ。酔っ払って帰って来ては朝まで玄関でダルんダルんに寝そべられるのは。

(まさか臼田くんと1つ屋根の下で過ごせるなんてなぁ…)

今まで互いの家には行き来していたものの、お泊まりをするだなんてことは一切なかった。
四六時中会ってはいるけれど、こうやって1日ずっと一緒ということは未だかつて経験したことがない。変な感じと思う反面夢のように思ってしまう。

(臼田くん…私のことどう思ってるんだろう…)

一緒にいてやっぱり気になることというのは私の印象だ。今まで尋ねたことも言われたこともない。
そして、私という人間をどう想ってくれているのか。その2つは絶対に押さえておきたい。
何より臼田くんをもっと知りたい。
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