こころ、ふわり


「ホラー映画以外ならなんでも平気だよ」


と私が言うと、真司は洋画のアクション映画を選んでそれを観ることになった。


映画館に来て映画を観るのは夏休みに菊ちゃんと邦画の恋愛映画を観に来て以来だった。


映画館で映画を観ている間、時々真司の方を見てみる。


こういう時ばかりはさすがの真司も静かに映画を観ていた。


もしも同年代の男の子と、例えば真司と付き合ったら。
こんな風に日曜日とか放課後にデートするようになるのかな。


手を繋いで歩いていても特に違和感も無いし、周りからは当然のように恋人同士に見えるだろう。


叶わないと分かっている恋よりも、叶う恋をした方がいいのは重々承知だ。


それなのにどうして心のどこかで芦屋先生のことを思い浮かべてしまうのかな。


私はこの間の美術の授業で、ほとんど何も描いていないような絵をそのまま提出してしまった。


あの絵を受け取った時、芦屋先生はうつむいていたけれどどんな表情をしていたのだろうか。


私からはよく見えなかった。


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