こころ、ふわり
12 季節外れの台風の夜に


私が自分の本当の気持ちに気づいてから、ひと月が経った。


気づいたからといって何か行動を起こせるわけでもなくて、いつもと同じ日常がただ過ぎていくだけだった。


眠っている芦屋先生の頬にこっそりキスしたことは、私の胸にしまい込んだ。


キスなんてしたこともないくせに、自分からしてしまったという事実がいまだに信じられなかったりする。


そして、こんな気持ちのまま真司との関係を曖昧にしておくのも嫌だったので、ちゃんと話をしたかった。


でもなかなかそのチャンスも無く、ひと月も経ってしまった。


そして、ひと月前と変わったことがもうひとつ。


私の怪我が徐々に回復してきているということ。


まだ部活には参加できるレベルではないにしろ、あと数週間で完治するだろうと病院の先生に言ってもらえた。


歩き方も前のように歩けるようになってきて、一緒に登校する菊ちゃんにも迷惑をかけることは少なくなってきた。

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