こころ、ふわり
すると、澪が少し眉を寄せて徳山先生の肩を叩いた。
「透、違うよ。萩たちは私たちのせいで別れたんだよ」
「え?」
驚いたような顔をした徳山先生を横目に、私は澪がすべてを悟っていたことをここで初めて知った。
澪には詳しく何も話していない。
それなのに、どうして?
私の顔にその疑問がしっかりと表れていたようで、澪は苦笑いを浮かべた。
「言わなくてもなんとなく分かったよ。きっと芦屋先生は、もしも関係がバレてしまった時の萩のことを心配したのよね。私みたいに謹慎処分になったり、噂話の中心になるようなことが嫌だったんじゃないかな」
「そ、そんなこと……」
否定したかったのに、出来なかった。
たしかに芦屋先生は言っていた。
私が好奇の目に晒されるようなことがあったら、耐えられない、と。
私だって芦屋先生が学校を辞めるようなことがあったら耐えられないのに。
「それは悪かった」
徳山先生が申し訳なさそうに肩をすくめる。
「だけど卒業まで待つとかじゃなく、別れるなんて思い切った決断は芦屋先生らしいけど」
「らしい、って?」
澪が納得がいかないような不満げな顔で、隣の徳山先生を怪訝そうに見やる。